病弱書店

少し体が弱いです。本を紹介するブログです

ミニチュアスナイパーとペーターの方舟

赤毛のアン』のマシューについて書いた記事(マーティン・シーンがマシューって! - 病弱書店)を友人が読んで(正しくは私に読まされて^^;)、「違う感じを持っている」と。

「マシューには童貞であるがゆえの乾いた欲望みたいなものを感じる」と。

一瞬、え?!ってなりましたが。

だって『赤毛のアン』に性的なものを持ちだすって!!!

やめて!って感じだもの。

でも

読み返して「確かに」と思ったんです。

 

「マシュウは、マリラとレイチェル夫人のほかは女という女をいっさい恐れていた。この気味の悪い、生き物どもがこっそり自分のことを笑っているのではないかと、思えて仕方がないのであるが、その不安は的中しているとも言えた。というのは彼は体つきはがさつで、長い鉄色の髪は、前こごみの肩まで下がり、ふっさりした、やわらかい鳶色の、あごひげは二十歳のころからはやしている、という奇妙な風采をしていたからである」(『赤毛のアン村岡花子訳 新潮文)

 

なんだかひどい書かれよう…

ずいぶんだけど、確かにこれは何か卑屈にならざるを得ない気持ちが隠されているのかもと思いました。

友人の洞察力スゴイ!

 

でも

でもやっぱり、私の中の『赤毛のアン』のマシュウ(マシューじゃなくてマシュウでしたね)は、「童貞」がどうとか、「欲望」とか関係ない世界で生きててほしい。

というのもきっと本の『赤毛のアン』よりアニメ『ハウス食品世界名作劇場』のイメージが強烈だからです。

 

歴代の作品の中で、強く印象に残っているのが『赤毛のアン』と『アルプスの少女ハイジ』。

これ、どうしてか自分でも理由がよくわかるんです。

ものすごくしてみたいこと、ものすごく欲しいものがその二つにあったから。

 

ものすごくしてみたかったのは、『赤毛のアン』の中に出てきます。

ピクニックバスケットに食べ物を入れて、小川のほとりに行ったアンと友達のダイアナ。瓶に入った牛乳を小川で冷やすんです。子供の頃、牛乳はあまり好きじゃなかったけれど、これはぜひ飲んでみたかった。

 

そしてものすごく欲しかったのは、『アルプスの少女ハイジ』でハイジの友人ぺーターが作る木彫りの小さな動物です。これは、農閑期になる冬にスイスの農民(ペーターはヤギ飼いですが)が作るお土産品だと思われます。ペーターはノアの方舟とそこに乗る動物を作っていました。

 

私はどうしてもこれが欲しくて。

子供の頃好きだったものも大人になると興味を失うことがほとんどです。

だけど、何かを模した小さなものはいつまで経っても好きなまま。

 

先日もこんなものを買ってしまいました。

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ガチャガチャです。

わざわざ池袋のヴィレッジヴァンガードまで行って^^;

いい大人が。

小さなものならなんでもいいのか!って声が聞こえてきましたよ。

 

www.takaratomy-arts.co.jp

 

 

 

 

マーティン・シーンがマシューって!

通勤途中にポスターを見たのです。

 

10月5日から公開されている『赤毛のアン 初恋』と11月2日公開の『赤毛のアン 卒業』。

 

13歳と16歳のアンが描かれているそうなんです。

アン役の少女もマリラも違和感がありません。

アンの友達ダイアナも。

 

でも

でも、マシューがなぜマーティン・シーン???

 

違和感ありありです。

 

だって、マシューは朴訥で、養女のアンと自分の妹であるマリラ、近所に住むレイチェル・リンド夫人以外の女性を恐れているのです。

マシューにとって「女性は怖いもの。得体の知れないもの」

ってマーティン・シーンが思うと思う?

若い頃からモッテモテで、娘たちが「わたしをダンスに誘ってくれないかしら」と恋い焦がれたはず。

「俺が誘えばイチコロさ」って思ったはず。

それにマーティンはまだまだ枯れてないのです。

マシューは枯れっ枯れ。色気どころか、甘いもの食べたいとか寝られるだけ寝ていたいとか、欲望とも言えないような欲望の気配さえない気がします。

子供の頃アニメで見たり、本で読んだマシューは本当におじいさんだったけれど、考えてみれば、アンを引き取った時は60歳。今の時代の60歳で枯れた人はあまりいないのかもしれません。だったら適役?と言えなくもないのか?

 

そういえば、宮部みゆきの『ペテロの葬列』がドラマ化された時、バスジャック犯役の長塚京三が何度も「おじいさん!」と呼びかけられていて違和感を感じました。

長塚京三がおじいさんって~

って思ったけど、若い人から見たらおじいさん👴ですよね。

 

こうして小さな違和感が増えて来て、自分がそれだけ歳を取ったことに気づいていく。

「うそ~ん」が「そっか」になって、自分の本当の年齢と心の中の精神年齢をすり合わせていく。

親の介護問題が出てきた数日後にそんなことを思ったのです。

 

赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫)

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ペテロの葬列 上 (文春文庫)

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